ADHDの薬
薬物療法を始める際に、親御さんが最も心配することの1つは、薬を始めたらずっと飲み続けないとならないのか?いつかはやめられるか?ということだと思います。
今回は、ADHDの薬について、説明したいと思います 。
ADHDの症状は、成長とともに改善することが多いです。一番下の緑の線をADHDの症状がない状態とすると、一番上の青の点線は年齢が大きくなるとともに、ADHDの症状が弱くなっていくことを示しています。Aの時点から薬物療法を開始し、ADHD症状の改善が見られたとします(A‘からはじまる青の実線)。しばらく薬を継続し、B’の時点で薬を中止するとどうなるでしょうか?薬はADHDを治すものではなく、飲んでいる間だけADHD症状を軽減するものなので、薬を中止するとBの状態になると考えられます。薬を飲んでいない時の状態に戻るわけですが、ADHD症状は、本人の成長に伴ってAの時点に比べると改善しています。では、Cの時点で薬を中止した場合はどうでしょうか?Cでは、点線と緑の線は一致していますので、成長に伴ってADHD症状が消失している状態です。ですので、この時点で薬を中止すれば、症状がない状態で過ごせるということになります。
Cの時点が、何歳なのかはわかりません。生活が落ち着いていれば、一度薬を減らしたりやめたりしてみて、まだ薬が必要そうであれば元に戻す、というやり方が良いかなと思います。

ADHDの症状は、成長とともに改善していくものの、小児でADHDと診断された人の15~50%は大人になっても症状が残ることも分かっています。そのような場合の薬物療法は、どのように考えればよいでしょ うか?
一番上の赤色の点線は、緑の実線に達することなく、⇩(症状改善の限界)のところでそれ以上改善のない状態(プラトー)になってしまいます。これは大人になってもある程度の症状が残っていることを示します。このような人の場合、薬物療法により、症状がない状態まで改善したとしても(青の実線)、薬を中止すると症状が残っている状態に戻るということがわかります(C‘からCの矢印)。この場合、大人になっても薬を継続するかどうか、生活の状況も踏まえて選択することになります。

また、薬の効き具合も、個人によって異なります。図①、②は薬の効果がしっかり出て内服していれば症状がない状態にまで改善することが前提ですが、実際には、薬を飲んでも、もともとの点線とそれほど差がない場合もあります。また、薬を飲み続けていても、緑の実線に達することなく、⇩(薬の限界)のところでそれ以上改善のない状態になることもあります。
