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ASDの薬

薬物療法を始める際に、親御さんが最も心配することの1つは、薬を始めたらずっと飲み続けないとならないのか?いつかはやめられるか?ということだと思います。
今回は、ASDのいらいら・かんしゃくの薬について、説明したいと思います。

ASDの子どもの癇癪やイライラは、易刺激性(irritability)と呼ばれます。ASDの子どもは、ASD特性のない子どもに比べて、ある出来事に対してイライラしやすく、またそのイライラの程度も大きいと考えられています。矢印をイライラさせるような出来事(環境)とすると、ASD特性のない子が緑線のような反応をするのに対し、ASDの子どもは青線のような反応をすると考えられます。この青線の反応を、なるべく小さくするにはどうしたらよいでしょうか?

多くの人は、まずは矢印(=イライラさせるような出来事)を減らそうと考えるのではないでしょうか?これがよく耳にする「環境調整」にあたります。こどもがどのような状況でイライラしやすいのか?をASDの特性を考慮しながら、理解することが大切です。失敗したと感じた時、間違いを指摘された時、冗談を真に受けた時、など思考の硬さやコミュニケーションの苦手さが原因となることもあれば、暑い時、騒がしい時、眠い時、など身体的な感覚が原因となることもあります。矢印を同定し、矢印を取り除くあるいは小さくする工夫を積極的に行いましょう。
 もう1つの方法として、薬物療法があります。具体的にはASDの癇癪やイライラには、アリピプラゾールまたはリスペリドンという薬を使います。これらの薬を使うと、ある出来事に対して生じる怒りが小さくなり、状況は変わらずとも怒りが小さくなると考えられます(青色の点線→青色の実線)。環境調整を行わない場合には、薬剤を中止すると症状は元に戻りますので(青色の実線→青色の点線)、並行して環境調整を進めることが重要です。

 まとめると、イライラさせるような出来事はできる限り減らし(環境調整)、環境調整だけでは難しい場合には薬物療法を併用する、というやり方が良いと思います。

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